シンボル
薔薇

薔薇

薔薇(ローザ・ミスティカ)
Rosa Mystica(羅)・Mystical Rose(英)
◆ 別称 ローザ・ミスティカ(神秘の薔薇)
◇ 起源時代 教父時代からの伝統、中世に図像として発展
◆ 関連聖句 雅歌2:1 ほか
◇ 主な使用例 ロザリオの語源、リジューの聖テレーズの象徴
◆ 図像的特徴
とげのない白い薔薇(無原罪の象徴) 赤い薔薇(殉教者の血) 五枚の花びら(キリストの五つの傷) 薔薇窓(ゴシック聖堂)
※薔薇はキリスト教において、聖母マリアを指す「ローザ・ミスティカ(神秘の薔薇)」の称号や、数珠を用いた祈り「ロザリオ(薔薇の冠)」の語源として、また殉教者の血や失われた楽園の記憶として、幾重にも意味を重ねてきた花です。
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Origin / 由来・語源

薔薇は古代ローマやギリシアでは愛と美の女神(ウェヌス/アプロディーテー)に捧げられた花でしたが、初代教会はこの強い象徴性をキリスト教的な意味へと読み替えていきました。まず結び付けられたのは殉教者の血で、赤い薔薇は信仰のために命を捧げた人々の記憶として用いられるようになります。聖母マリアへの信心が深まるにつれ、今度は白い薔薇がその清らかさと結び付けられていきました。

この背景には、楽園エデンの薔薇にはとげがなく、とげは人祖の堕罪ののちに現れたという古い伝承があり、とげのない白い薔薇は無原罪の聖母マリアを象徴する花として定着しました。またロレトの連祷でマリアに捧げられる「ローザ・ミスティカ(神秘の薔薇)」という称号は、雅歌2章1節の「わたしはシャロンのばら、谷のゆり」といった詩的な花の描写を、後世の教会がマリアの美しさと聖性になぞらえて読み込んできた伝統にも連なっています。

Meaning / 聖書的・神学的な意味

薔薇の色にも意味が込められています。白い薔薇は聖母マリアの純潔と無原罪の御宿りを、赤い薔薇はキリストの受難と殉教者たちが流した血を表すとされ、時には五枚の花びらがキリストの五つの傷になぞらえられることもあります。

もう一つの重要な結び付きが、祈りの数珠「ロザリオ」です。ロザリオ(rosarium)はラテン語で「薔薇の庭」「薔薇の冠」を意味し、一つ一つの「アヴェ・マリアの祈り」を聖母に捧げる一輪の薔薇に見立て、祈り終えたロザリオ全体を彼女に捧げる花の冠として表現した名前です。ロザリオのパーツやメダイに薔薇の意匠が頻繁に用いられるのは、この語源に由来します。

History / 歴史的背景

薔薇を象徴として最も壮麗に用いた例が、中世ゴシック聖堂の「薔薇窓(バラ窓)」です。ミラノ大聖堂やフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂、アッシジの聖フランシスコ聖堂など、多くの聖堂の正面や側廊を飾る円形のステンドグラスは、花びらのように放射状に広がる意匠から「薔薇窓」と呼ばれ、堂内を色とりどりの光で満たします。また中世以来、教皇が毎年祝福した金の薔薇(黄金の薔薇)を功労者に授ける習わしや、四旬節第4主日を「薔薇の主日(ラエターレ)」として薔薇色の祭服をまとう伝統も、この花の象徴性を受け継いだものです。

近代になって薔薇と最も強く結び付けられた聖人が、19世紀フランスのカルメル会修道女、リジューの聖テレーズです。「小さき花」とも呼ばれた彼女は、亡くなる前に天国から薔薇の雨を降らせて人々を助け続けると語ったと伝えられ、この言葉から薔薇は彼女を象徴する花となりました。今日、薔薇を手にした姿の聖テレーズのメダイやペンダントが数多く作られているのは、この逸話に由来しています。

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