シンボル
百合

百合

百合(百合の紋章/フルール・ド・リス)
Lilium(羅)・Fleur-de-lis(仏)
◆ 別称 百合の紋章、フルール・ド・リス
◇ 起源時代 中世に紋章として定着、12世紀以降フランス王家が使用
◆ 関連聖句 雅歌2:2、マタイ6:28 ほか
◇ 主な使用例 フランス王家の紋章、ジャンヌ・ダルクの紋章
◆ 図像的特徴
白い百合(純潔の象徴) 受胎告知の場面 三枚の花弁(三位一体) 様式化された紋章(フルール・ド・リス)
※百合はキリスト教において、聖母マリアの純潔を表す花として最も広く用いられてきた花のひとつです。同時に様式化された「百合の紋章(フルール・ド・リス)」として、フランス王家やジャンヌ・ダルクの紋章にも用いられ、花としての信心と紋章としての歴史、二つの側面を併せ持つモチーフです。
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Origin / 由来・語源

百合が聖なる花として扱われる背景には、聖書における二つの言及があります。ひとつは雅歌2章2節の「乙女たちの中にいるわが愛する者は、茨の中の百合の花のようだ」という詩的な描写、もうひとつはマタイによる福音書6章28節でイエスが「野の百合がどのように育つか、考えてみるがよい。働きもせず、紡ぎもしない」と語り、人の思い煩いを戒めた場面です。労せずして美しく咲く百合は、神の配慮と恵みの象徴として早くから教会の言葉に根を下ろしていきました。

この花が聖母マリア個人と強く結び付けられるようになったのは、受胎告知の図像を通してです。ルカによる福音書1章の受胎告知の場面そのものに百合への言及はありませんが、中世以降の西方教会の美術では、大天使ガブリエルがマリアに白い百合を差し出す、あるいは傍らの花瓶に百合が生けられた構図が定番となり、マリアが神の言葉を受け入れる清らかさを、この花が視覚的に語るようになりました。

Meaning / 聖書的・神学的な意味

白い百合はまず何よりも純潔の象徴です。聖母マリアの処女性や無原罪の御宿りと結び付けられるほか、マリアの夫である聖ヨセフも、しばしば百合を手にした姿で描かれ、その貞潔を表しています。ほかにも純潔を守って殉教した聖女たちの図像に百合が添えられ、汚れなき信仰を証しした人々を象徴してきました。

もう一つの重要な展開が、様式化された「百合の紋章(フルール・ド・リス)」です。三枚の花弁は、しばしば信仰・知恵・騎士道の三徳、あるいは三位一体になぞらえられました。この紋章は12世紀頃からフランス王家の紋章として広く用いられるようになり、王権と結び付いた宗教的な意匠として発展します。15世紀にはジャンヌ・ダルクが、フランス王太子を助けるという自らの使命を象徴する紋章としてこの百合を掲げ、王家の紋章と信仰的な使命感を重ね合わせました。

History / 歴史的背景

受胎告知の場面に百合を描く伝統は、13世紀以降の西方教会美術で急速に広まりました。ゴシック期の彩色写本から、ルネサンス期の受胎告知を主題とした数多くの祭壇画に至るまで、ガブリエルの手にした百合はマリアの純潔を語る定番の図像として定着し、教会の彫刻やステンドグラスにも繰り返し用いられています。

一方、紋章としての百合は、伝承ではフランク王クロヴィス1世の改宗にまつわる逸話に結び付けられることもありますが、実際に王家の紋章として体系的に用いられるようになったのは12世紀、ルイ7世の頃からとされています。以後フランス王家の象徴として定着した百合の紋章は、ジャンヌ・ダルクの旗にも掲げられ、王権と信仰、そして祖国への献身が重なり合う紋章として歴史に刻まれました。今日、メダイやクロスに百合の紋章が用いられ続けているのは、この長い伝統の延長線上にあります。

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