聖心
Origin / 由来・語源
聖心(イエスの聖心)の聖書的な根拠は、ヨハネによる福音書19章にあります。十字架上で息を引き取ったイエスの脇腹を兵士が槍で突くと、血と水が流れ出たと記されており、この場面が、キリストの心臓そのものへの信心の出発点となりました。中世には聖ゲルトルードなど個々の神秘家がこの信心を深めていましたが、正式な形をとったのは17世紀、フランスの修道女、聖マルグリット・マリー・アラコクに、キリストが自らの聖心を示し、それを敬う祝日を求めたとされる一連の啓示によってです。
御心(マリアの汚れなき御心)の由来は、ルカによる福音書2章、幼子イエスが神殿に捧げられた場面にさかのぼります。老シメオンはマリアに「あなた自身も剣で心を刺し貫かれます」と予言し、この言葉から、剣で貫かれた心臓がマリアの御心を表す図像として定着しました。この信心は長い年月をかけて育まれ、1917年のファティマでの聖母出現の報告によって、あらためて大きな広がりを見せることになります。
Meaning / 聖書的・神学的な意味
聖心の図像は、心臓を茨の冠が取り囲み、その上部に十字架と小さな炎が置かれる構図が基本です。心臓を囲む茨の冠はその愛のために引き受けられた苦しみを、上に立つ十字架は自己犠牲を、そして炎は燃えるような愛そのものを表しています。血や光を伴って描かれることも多く、これらすべてが合わさって、苦しみと勝利を併せ持つキリストの贖いの愛全体を語っています。
御心に添えられる剣は、わが子の受難に寄り添うマリアの悲しみを、周囲を彩る薔薇は、罪から守られた汚れなき愛を表しています。聖心と御心が対になって描かれるとき、そこにはキリストとマリア、二つの愛が固く結び付いているという信仰が込められており、この「両心」への信心は、しばしば共に祈られ、共に捧げられてきました。
History / 歴史的背景
聖心の信心は、1673年から1675年にかけてパレー・ル・モニアルの修道院で聖マルグリット・マリー・アラコクが受けたとされる啓示を通して、フランスから広く西方教会全体へと伝わっていきました。この信心が最も壮麗な形で結実したのが、パリのモンマルトルの丘に建つサクレクール(聖心)大聖堂です。普仏戦争ののち、国民的な贖罪と奉献のしるしとして建設されたこの聖堂は、今も聖心信心を象徴する代表的な聖地となっています。
御心の信心も、その後の歴史の中で新たな広がりを見せます。1917年、ポルトガルのファティマで3人の羊飼いの子供たちが聖母を見たと伝え、その中でマリアの汚れなき御心への信心と、世界の奉献が求められたとされました。1942年には教皇ピウス12世がこの求めに応えて世界をマリアの御心に捧げ、以後「聖心と御心」を対にしたメダイやペンダントは、二つの愛への信心を身につける品として、今日まで広く親しまれています。
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