十字架

ラテン十字

十字架の基本形/キリスト教で最も広く使われる型
Crux Immissa(羅)/ Crux Ordinaria(羅)/ Latin Cross(英)/ Croix latine(仏)
ラテン十字
※ 縦棒が横棒より長く伸び、横棒が中央よりやや上に配置される十字の形。当店で扱う十字架ペンダント・クルシフィクスの大半はこの基本形に基づいています。「ラテン十字」という名称自体が商品名に使われることは少ないため、まずはこの型そのものを紹介するページとして位置づけています。
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Origin / 由来・語源

ラテン十字は、ラテン語で「交差させられた十字」を意味するクルクス・インミッサ(Crux Immissa)、あるいは「通常の十字」を意味するクルクス・オルディナリア(Crux Ordinaria)と呼ばれます。四つの腕を持つ十字のうち、縦棒が横棒よりも長く伸び、横棒が中央よりやや上寄りに交わる、最も基本的な形です。

この非対称な形は、単なる装飾的な意匠ではなく、古代ローマの処刑具としての実際の構造に由来すると考えられています。当時の磔刑では、地面に打ち込んだ長い縦の柱(スティプス)に、横木(パティブルム)を渡して罪人の両腕を固定しました。縦棒が長いのは、地面にしっかりと立てるための実用上の必要があったためで、正方形に近いギリシャ十字のような左右対称・装飾的な形とは、そもそもの成り立ちが異なります。当時、磔刑は奴隷や異民族、重罪人に科される、見せしめのための恥辱に満ちた処刑方法であり、この形そのものが強い屈辱の象徴でした。

Meaning / 聖書的・神学的な意味

新約聖書の四福音書はいずれもイエスの磔刑を記していますが、原語のギリシャ語「スタウロス」やラテン語「クルクス」は十字の正確な形状までは特定しておらず、学術的には諸説あります。それでも西方教会の伝統では早くからこのラテン十字の形が定着し、中世以降のカトリック・プロテスタント双方において、キリスト教そのものを表す最も普遍的な図像として受け継がれてきました。

縦棒は神と人とを結ぶ垂直の関係を、横棒は人と人との水平のつながりを表すとする解釈は広く親しまれています。また、コルプス(キリスト像)を伴わない「空の十字架」は、十字架上の死で終わらず復活したキリストを強調するプロテスタント諸派で好まれる一方、カトリックや正教会では、キリストの受難と自己犠牲そのものを見つめる信心として、コルプスを伴うクルシフィクス(キリスト磔刑十字架)が重視されます。同じラテン十字の形が、教派によって異なる強調点で受け止められている点は興味深いところです。

History / 歴史的背景

意外に思われるかもしれませんが、313年のミラノ勅令でキリスト教が公認されるまで、十字架そのものが図像として描かれることは多くありませんでした。当時、磔刑は最も卑しい罪人に科される見せしめの処刑であり、その形をあからさまに掲げることは危険と恥辱を伴ったためです。実際、2〜3世紀のカタコンベ(地下墓所)の壁面には、十字架よりもイクトゥス(魚)、錨(ヘブライ人への手紙6章19節に基づく希望の象徴)、船、善き羊飼いといった、迫害下でも仲間同士にだけ伝わる暗号的なシンボルの方が数多く見られます。2世紀の教父クレメンス・アレクサンドリヌスが、印章に刻むべき図像として鳩・魚・船・竪琴・錨を挙げた記録が残っていますが、そこに十字架は含まれていません。

313年にコンスタンティヌス帝がミラノ勅令を発してキリスト教を公認すると、状況は大きく変わります。もっとも、当初コンスタンティヌス自身が軍旗に掲げたのはキー・ロー(ΧΡの組み文字)であり、コルプスを伴う十字架像が教会美術の定型として広まっていくのは、5〜6世紀以降のことです。以来、ラテン十字は教会の屋根から墓碑、紋章、装身具に至るまで、世界で最も見慣れた宗教的図像となりました。あまりにも普遍的であるがゆえに、かえって「なぜこの形なのか」が語られる機会は少ない十字架でもあります。

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