十字架

トレフォイル十字

四つの腕の先が三つ葉状に膨らむ、使徒たちの十字架
Trefoil Cross(英)/ Budded Cross / Cross Bottony(紋章学)/ Apostles' Cross
トレフォイル十字
※ 十字の四つの腕それぞれの先端が、クローバーのような三つの丸い房(三つ葉)に分かれる形。宗教美術では「トレフォイル(三つ葉)十字」「バデッド(芽吹いた)十字」、紋章学では「ボトニー十字」と呼ばれる、同じ形を指す複数の呼び名を持つ十字架です。
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Origin / 由来・語源

トレフォイル十字は、四つの腕それぞれの先端が、クローバーの葉やつぼみのような三つの丸い房に分かれる十字です。紋章学での呼び名「ボトニー(Bottony / Botonée)」は、フランス語で「ボタン」「つぼみ」を意味する言葉に由来し、まさにこの芽吹くようなふくらみを指しています。この形は中世を通じてベネディクト会修道士のあいだで広く用いられ、12〜14世紀の聖職者の祭服にもしばしば見られる、ゴシック期の教会美術と紋章学に深く根ざした様式です。

Meaning / 聖書的・神学的な意味

それぞれの腕の先にある三つの房は、幾重にも意味を重ねて読み解かれてきました。まず単純に、父と子と聖霊という三位一体を表すとされます。同時に、聖パウロがコリントの信徒への手紙一13章で語った、信仰・希望・愛という三つの徳(神学的三徳)を表すとも言われます。さらに、四つの腕すべての房を数え合わせると十二になることから、福音を携えて世界へ散っていった十二使徒を表すともされ、「使徒たちの十字架(Apostles' Cross)」という呼び名もここから来ています。一部の伝承では、この芽吹くような形を、旧約聖書民数記17章に記された「花を咲かせたアロンの杖」の奇跡にも重ね合わせ、枯れた木から新しい命が芽生えるという主題を、この十字架自体の姿に読み取ってきました。

History / 歴史的背景

この十字は信心具や紋章の枠を越えて、思いがけない場所にも根を下ろしています。ヨーロッパの古い地図や標識では、三つの房を持つこの十字が、大聖堂(カテドラル)の所在地を示す慣習的な記号として使われてきました。房のないシンプルなラテン十字が普通の教会や礼拝堂を示すのに対し、房が三つ付くことで「格の高い聖堂」であることを一目で伝える、実務的な記号としての役割も担ってきたのです。房の数は三つが最も一般的ですが、まれに四つの房を持つ形(四福音書記者を表す)や、五つの房を持つ形(キリストの五つの傷を表す。エルサレム十字とも通じる主題です)も存在します。またコンスタンティノープル総主教庁(ギリシャ正教会)の紋章にも三つ葉の意匠が使われており、この形は中世西方教会の枠を越えて、東方正教会の紋章文化にも広がりを見せています。

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