十字架

ギリシャ十字

四本の腕が等しい、ビザンティン世界の基本形
Greek Cross(英)/ Crux Quadrata(羅)/ Croix grecque(仏)
ギリシャクロス
※ 縦横の腕が同じ長さの十字。ラテン十字と対をなす、キリスト教のもう一つの基本形です。正教会・ビザンティン世界で好まれ、教会建築の設計図としても古くから用いられてきました。
画像準備中 - Image Coming Soon

 

Origin / 由来・語源

ギリシャ十字は、ラテン語で「四角い十字」を意味するクルクス・クアドラタ(Crux Quadrata)とも呼ばれる、四本の腕がすべて同じ長さの十字です。「ギリシャ」の名は、この形がギリシャ語を公用語としたビザンティン帝国(東ローマ帝国)の世界で特に好まれたことに由来します。現存する最古の作例の一つは、425年頃ラヴェンナに建てられたガッラ・プラキディア廟のモザイクで、星々に囲まれたギリシャ十字が、天におけるキリストの統治を表しています。329年頃コンスタンティノープルに建てられた聖使徒教会も、このギリシャ十字の平面図で建てられ、後のビザンティン建築の規範となりました。

Meaning / 聖書的・神学的な意味

下の腕が長く伸びるラテン十字が、キリストが実際に架けられた磔刑の道具としての姿を色濃く残しているのに対し、ギリシャ十字は必ずしも磔刑の場面そのものを表すためのものではなく、東西南北すべての方角へ等しく広がる教会と福音を象徴すると考えられてきました。ある建築史の研究では、東方教会がこの均整の取れた形を通じてキリストの復活と神化(テオーシス)を強調したのに対し、西方教会は長く伸びるラテン十字の形を通じて、犠牲と贖いをより強く印象づけようとした、という対比が指摘されています。実際の教会建築でも、ラテン十字の平面(バシリカ様式)が祭壇へと向かう巡礼・行列の道のりを強調するのに対し、ギリシャ十字の平面は、中央のドームの下に会衆が一つに集う、共同体としての礼拝空間を作り出します。

History / 歴史的背景

537年に完成したハギア・ソフィア大聖堂は、バシリカ様式とギリシャ十字の幾何学を組み合わせた画期的な建築で、その後10世紀のホシオス・ルカス修道院、12世紀の聖パンテレイモン聖堂へと、「十字形内接方式」と呼ばれる様式へ洗練されていきます。この理想的な均整美は時代を超えて建築家たちを魅了し続け、ルネサンス期にはレオン・バッティスタ・アルベルティやドナト・ブラマンテが、ギリシャ十字こそ調和と均整を体現する「完全な聖堂の形」として復権させました。ブラマンテが手がけたヴァチカンの新サン・ピエトロ大聖堂の当初案も、まさにこのギリシャ十字の平面図だったのです(後の建築家たちの手で、現在のラテン十字の平面に改められました)。

今日ではこの形は、教会建築の枠を超えて広く使われています。スイスの国旗、ギリシャ国旗の左上(カントン)部分にもこの十字が描かれ、1863年に発足した国際赤十字運動の紋章も、スイス国旗の配色を反転させる形でこのギリシャ十字の意匠を採用しました。もっとも赤十字社自身は、この紋章に宗教的な意味合いは一切込められていないと明言しており、あくまでスイスへの敬意を表すための意匠であるとしています。宗教的な起源を持つ形が、時代を超えて世俗の場でも広く用いられる象徴となった、興味深い例と言えるでしょう。

PICK UP ITEMピックアップ商品

もっと見る
  • メダイのサイズ保管方法

最近チェックした商品

最近チェックした商品はまだありません。