受胎告知
Raphaël Sadeler (II) (after Peter de Witte), Annunciatie, 1594-1632
Rijksmuseum, Amsterdam. Public domain.
The Event / 出来事
受胎告知とは、大天使ガブリエルが処女マリアのもとを訪れ、聖霊によって神の子を宿すと告げた出来事です。ルカ福音書1章26〜38節に記されています。マリアが「どうしてそのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに」と尋ねると、天使は「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを覆う。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる」と答えます。マリアが「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように(フィアット)」と答えた瞬間に、神の子が受肉しました。
この「フィアット(御心のままに)」の一言は、人類の救いの歴史を転換した言葉として、キリスト教神学の中心に置かれています。マリアの自由な「はい」なしには受肉は起こらなかったとされます。
Significance / 意義と歴史
3月25日はクリスマス(12月25日)のちょうど9か月前です。受胎告知の祝日は4〜5世紀ごろに始まり、カトリック・東方正教・聖公会・ルター派など幅広いキリスト教会で荘厳祝日として祝われています。典礼的には「主の受胎告知」とも呼ばれ、マリアの祝日であると同時に、神が人となられた「受肉」を記念する主の祝日でもあります。聖枝祭(パームサンデー)などと重なる場合は復活節第2主日の翌月曜日に移動されます。
中世ヨーロッパでは3月25日が新年の始まりとされていた国も多く、イングランドでは「レディ・デー」と呼ばれ1752年まで新年として扱われていました。また初期キリスト教の伝承では、アダムの創造・イエスの受難・紅海の奇跡なども3月25日に起きたとされており、この日付は救済史上の特別な日として記念されてきました。
In Art / 美術の中の受胎告知
受胎告知はキリスト教美術の中で最も多く描かれたテーマのひとつです。4世紀のプリスキッラのカタコンベに最古のフレスコ画が残っており、中世・ルネサンスを通じてレオナルド・ダ・ヴィンチ、フラ・アンジェリコ、ボッティチェリ、ヴェロネーゼ、エル・グレコなど無数の巨匠が描いています。典型的な図像では、左に翼を持つ天使ガブリエルが白いユリを手に跪き、右に書物を前にしたマリアが座っており、上方から聖霊を象徴する鳩と光の帯が降り注ぐ場面が描かれます。
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